2024年11月26日に開催されたFY2024 JDA Forumについて報告します。テーマは「世界のカーボンニュートラルの動きと水処理市場・水処理技術の最先端」でした。フォーラムは会場(ワイム会議室・お茶の水)に、講師および70名以上の参加者をお迎えして、Web形式とのハイブリッドで開催しました。
基調講演では、東京大学の沖大幹教授が、気候変動対策と水管理の重要性を説明されました。気候変動対策に、水インフラへの投資、水源の多様化、灌漑効率向上、警戒・警報システム導入などを指摘し、グローバル連携による知識・技術移転が重要であると強調されました。温室効果ガス削減という緩和策と、気候変動の影響への対策という適応策の両輪が必要であり、政府や企業、個人が協力して取り組むことの重要性を認識できました。
栗原優氏(JDA協会常任顧問)が、海水淡水化技術の現状と挑戦について説明しました。海水淡水化事業は国際的分業が進む中、海水淡水化による水供給が成長を続けるサウジアラビアでは、官営から民営へのパラダイムシフトが起きており、膜素材や関連機器供給を日米中が担っている一方で、ローカライゼーションへの対応が拡大しており、総合力の評価で長期的視野で取り組む必要性を理解しました。
赤松憲樹氏(工学院大学教授)が、ナノろ過膜の応用について、スケール防止、リチウムイオン回収、OAROやLSRROなどの先端の膜濃縮技術への適用を説明されました。サーキュラーエコノミーに貢献するNF膜プロセスの可能性を理解しました。
圓佛伊智朗氏(日立製作所)が、ネガティブエミッションへのアプローチについて講演されました。海草や海藻、植物プランクトンなどが海中に取り込む炭素(ブルーカーボン)を巡り、CO2吸収や貯留技術の取り組みを理解しました。
最後に、眞壁良氏(協和電機)が、浸透圧発電の実用化への取り組みを講演されました。電気料金は全世界的に上昇傾向にある中で、浸透圧発電導入の意義は高まっており、下水処理水と一般海水での浸透圧発電実用化に向けた技術が着実に開発されており、2030年の浸透圧発電の稼働を目指していることを理解しました。
上記の通り、各講演は最新技術や国際的な取り組みを含み、持続可能な水処理技術の発展に向けた具体的な事例が示されました。ご講演や討議を通じて、持続可能な水利用や脱炭素化に向けた技術革新、実用化への具体的なロードマップを共有しました。水処理分野における国際連携の重要性と技術発展の可能性が改めて確認される場となりましたことを報告します。