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第10回 IWA Membrane Technology Conference 報告

~IWA Membrane Technology Conference(米国、セントルイス、ワシントン大学、2023年7月23日~26日)にPlenary講演者として出席した栗原優JDA常任顧問による手記、抄録として掲載 ~


 コロナ問題で2回開催は延期されたが、3年前のスケジュール通り開催された。IWA-MTCの存在は知っていたが、私にとっても本当に久しぶり参加でもあった。膜に関する多くの学会、協会の国際学会はあるがIWA主催の膜専門部会の学会として存在感がある。この学会の1ヵ月前に日本でICOMが開催され、ここにも多くの人が参加していた。

 JDAのメンバーは、IDAの国際学会をイメージすると思うが、この学会は全く異なり、大学の教授や学生中心で、企業からの発表はほとんどない。

 

4人のPlenary講演者は

  1. Menachem Elimelech(イエール大学教授)
  2. 栗原(JDA常任顧問)
  3. Miriam Balaban(Desalination and Water Treatment Journal主筆)

以上の3人であり、元Zenonの Pierre Cote教授は豪雨のため不参加であった。

 

1.Menachem Elimelech教授の講演

 現在の大学側の膜研究の第一人者であり、今回も研究室門下生、共同研究者を含めると10名以上の参加であった。彼の発表は膜中の水・塩の移動はSolution diffusionではなく、Pore-flowであることをNon-Equilibrium Molecular Dynamics (NEMD)で実証したことを最近論文にしたものを発表した。

 

2.栗原JDA常任顧問の講演

 “Current Status and Future Trend of Seawater Desalination and Comprehensive Use of Seawater / Ocean Mining” で講演したが、M. Elimelech教授と同席するということで Water Treatment Mechanism in Reverse Osmosisの原点は膜にporeがあるかないか、その大きさはすでに我々が発表していることを強調した。2023年4月の Water Desalination Vol. 59, Number 15, 24, April 2023に掲載されているが、WDR編集者のTom Pankratzは “It’s time to change the textbook”として膜中の水、塩の流れは Solution-diffusionでなく、Pore-flow mechanismにすべきであるとしている。今回の学会では、栗原とElimelech教授は同一の Pore-flow Mechanism であった。

 

3.Dr. Miriam Balabanの講演

 A Lifetime with Desalination Membranesと題して、1965年にDesalinationに関わる雑誌の発行に関与してから現在までの人生を振り返る講演であった。Desalination Membraneに関する論文発表が1970-1980年代は日本は米国に次いで2位だったが、現在は20位前後に後退している。

 

4.Erik Hoek教授

 今回の学会ではKeynote speakerとして講演。“Engineering the Next-Generation of Membrane Materials Needed to Achieve Global Water Sustainability Goals”も大変興味深い発表であった。Hoek教授はLGのRO膜の創始者として知られているが、新規膜・膜プロセス開発の第一人者である実感を得た。

 

IWA-MTCに参加して感じたこと

 この学会には、日本からは都市工学で膜の応用に関係する方々中心に参加している。特に北大渡辺先生、東大山本先生らが中心となってリードしてきたと思う。今回もその流れで北大木村教授、中央大学山村教授の研究室の方々が参加されていた。

 ただ、次回の本学会開催国が中国、韓国、日本のいずれかとの議論で結果は韓国になったが、日本は立候補もできない状況にあるということを考え直す必要があるかもしれない。