RO膜による海水淡水化が定着し、メガトン(100万トン)規模の大型海水淡水化プラントが中近東では普通になってきています。このタイミングで現在の海水淡水化技術に対し、ブラインからのOcean MiningがSWCCの新技術として話題になっています。SWCCの新技術との関係は最近、JDA Archives活動の中で、今まで知らなかった興味のある事実が分かってきました。
1. 海水の総合利用システムとして日本が海水副成分回収を進めた背景は、1960年代後半の日米間の脱塩会議で米国からの報告のみではなく、日本からの報告も発信したいとして海水副成分の研究でもやるかという石坂誠一氏 (元工業技術院院長)の着想でスタートしました。
2. 高回収率海水淡水化
高回収率(60%)海水淡水化については、東レ(株)が1996年ブラインからも水を取り出し高回収化する Brine Conversion Systemを特許化、かつ商品化しました。高圧海水淡水化膜は、このプロセスのために開発し、世界へ展開しました。
3. 海水総合利用システムの提案:大矢、鈴木、中尾ら日本海水学会誌 第50巻 第6号、389-395 (1996)
上記2と同時期に、大矢晴彦氏(横浜国立大学名誉教授、JDA名誉会員)は海水淡水化の高回収率(80%)は運転(19-20 MPa)で達成できることを提案されていました。但し、高圧膜を開発したわけではありません。一方、海水ブラインの多段吸着法を活用することで、”Desert revitalization by the proposed integrated sea water utilization” として提案されました。今回JDA Archiveで大矢先生に登場いただき、本プロポーザルについて、その後100万トン/日の海水淡水化プラントを前提として、大矢先生がクウェイトの学会 (Desalination, 134 (2001), 24-36)とサウジアラビアで発表されました。この20年前の大矢先生の発表は、2022年にSWCCが投資家向けウェブサイトに記載されていることと内容と技術的には一致しています。NF膜や超高圧RO膜を提案され、100万トンベースでのプラントでの無機化学産業年間販売金額まで試算されています。SWCCの現在の提案を20年前に予言されていたことになります。